どうせ恋は炭酸飲料みたいなもの
「何あれ。生徒会長だからってさ」
「まあまあ、良かったじゃない。拓真のおかげで、めんどくさい書類の提出とかしなくてすむし」
「そうだけどさ。タクって、あたしに厳しすぎない?」
「そう? 拓真って、誰にでもああじゃない? それより、待たせると煩いから行こう」
黒いリュックを背負って促し、一緒に廊下に出ると、せっかちな拓真の姿はなかった。
早足で世羅と追いかけると、彼はすでに下駄箱で靴を履いているところで、全く動きに無駄がない。
「ねえ、そんなに急いでどうしたの?」
「あ? 悪い悪い。本屋に寄りたいんだよ」
「本屋? なんで? 漫画でも出るの?」
「お前と一緒にするなって。語学本だよ」
「参考書じゃなくて、語学本?」
そう問いかければ、拓真は肩を竦めた。
「そうだよ。韓国語と中国語、ドイツ語、フランス語あたりかな」
「そんなに?」
「今年から、アメリカの姉妹校から留学生が来きただろ? 生徒会長として、少しは意思の疎通が取れたほうがいいと思ってな」