【短編】 Sexless-Love
 






「月経血だね」

「……は?」

「樋口君の大量出血の原因は、外傷じゃない。
 月経だ」

 ……医者が、何を言っているのか、判らなかった。

 宇宙人が喋っているような言葉に、僕は一瞬、息をのむ。


「月経って……あの。
 月のもの、とか、生理、とかいう、オンナのヤツですよね?」

 僕の言葉に、中年の親父みたいな医者は、そうだ、とうなづいた。

「今までも、何度か月経を繰返していたようだけど。
 身体の中に膜に覆われたまま溜り、外には出なかったようだね。
 それが、今回は強く蹴られて破れ……今までの分、込みで大量に血が出てきたらしい。
 そう。
 樋口君は……
 性器の外観は、男性のように見えるが、実は睾丸も精巣も無い。
 それどころか。
 体内に、子宮も卵巣も持っている、正真正銘の女性だったんだ」

「な、なんだって!!」


 思わず叫んだ僕の声が、処置室中に轟いた。


 僕が……僕が、オンナ!?

 そんなこと、ありえない!!!!




 あれから、血だらけの僕は、問答無用で救急車に乗せられた。

 そして。

 救急隊は僕を病院の処置室に放り込んだか思うと、いろんな検査をした挙句。

 海外出張で、明日まで帰って来れない両親の代わりに、付き添ってくれた美幸と担任教師を廊下に追い出して。

 医者は、言った。

 僕が、実は【女の子だった】んだ、と。

 もし、言葉で殴られるコトがあるのなら、まさしく。

 今のこの状況だと思う。

 大体二千人に一人の割合で。

 ヒトは。

 本当の性別が判りづらかったり、遺伝子上の性別とは逆の外見で生まれて来るコトがあると言う。



 
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