【短編】 Sexless-Love
 それは、半陰陽って言う遺伝子的な病気で。

 ヒトそれぞれの程度によって、違うらしい。

 僕みたいに、遅れた第二次成長期で気がつくヒトもいれば、一生、ただの不妊症だと思って気がつかないヒトもいるようだった。

 医者は、腕組みをしながら僕に言った。

「本来は、コレが判っても。
 今までどおりの性で一生を送るヒトが多い。
 でも、樋口君の場合は……
 相当ホルモンバランスが崩れているようだね。
 夜にきちんと寝てても、昼間眠くて、授業が聞けなかったり。
 激しい運動をすると、倒れちゃったりしてたんだろう?
 それに、女性としての機能をとっても、君は一生不妊で将来、自分の子供は望めない。
 手術をしても、完全な【男】にはなれないんだ。
 それよりも、女性としてのホルモン治療をしながらバランスを整えれば。
 もっと自由に、生活できるかもしれない。
 卵巣も子宮もあるから、女性としてなら、子供も産めるかもしれないけれど。
 ……どうする?」

「……う」

 そんなもの、急に、どうする? と言われたって!

 ……どうすればいいんだ。
 
 医者は、これから性別を変えて生きるのかどうか、よく考えておくように、とか。

 僕を殴った栗田たちを障害罪で訴えるのか決めてくれ、とか言っていたけれど。

 僕にとって、全ての言葉や選択なんて、意味がなかった。


 僕が【女の子】だったなんて……!!

 ふらふらと処置室を出ると、美幸が飛んで来た。

「大丈夫?」

「……うん」

 全然大丈夫なんかじゃなかったけれど。

【傷】だけならば。

 本当に大したことなんてなかったから。

 そう言って、担任を追い払うと僕は。

 待合い室のイスに座り込む。

「……ねぇ、お腹の傷、本っ当は、どうだったの?」

 そのまま、動けない僕の顔を心配そうに覗き込む美幸に。

 僕は、なんとか微笑んでみせた。

「うん。大丈夫だよ。
 僕の腹に傷なんてなかったから」

「……え?
 でも、あんなに血がいっぱい……」

「ただの月経だって」

「……は?」

 僕の告白に。

 美幸の顔が、今まで見たこと無い表情で固まった。


 



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