【短編】 Sexless-Love
 


 それから僕は。

 ずうっと悩んでる。




「樋口。
 テメー、今日のプール何で休んだんだよ?
 女の子の日だからかぁ」

 放課後。

 椅子に座って、帰りのしたくをしていると、また。

 栗田と吉野にからかわれた。

 今度殴ったら、絶対に警察沙汰にしてやる、と言っておいたおかげで、直接僕に手を出す事は無くなったけれど。

 それでもちまちましい、嫌がらせは続いている。

 しかも。

 僕のことは何も知らないはずなのに、案外鋭く突っ込んで来るんだ。

 僕は半ばやけくそに答えた。

「そうだよっ!」

「ぎゃははは、ウケる~~」

 ヤツらは、楽しそうだったけれど、僕はちっとも面白くなんてなかった。

 栗田たちやクラスメートの姿が見えなくなると、僕は、そのまま机に突っ伏して、呟いた。

「腹痛て~~
 腰痛て~~
 貧血で、めまいする~~
 ヤッパ月経二日目ってキツぃ~~」

「……男子が言って、これ以上不気味なセリフは、他に無いわね」

「……うるさい」

 教室に一人残った、呆れ顔の美幸に。

 僕は、身体をくの字に折ったまま、睨んだ。



 衝撃の事実が発覚してから1ヶ月。

 両親と、美幸と学校と。

 それ以外には僕のカラダのことは内緒のまま。

 とうとう来るべきモノが来た。

 本当の生理だ。

 体調不良を理由に、学校をサボろうとした僕は。

 美幸に耳をつかまれ、登校することになった。

 相変わらず両親も家に居ないことが多いから。

 一人で悩んでいたって、ロクなことない、って。

 慣れない月経痛に、学校に行く自信もなかったけれど。

 美幸には「生理って病気じゃないから」って、あっさり僕の訴えは、却下された。

 それでも。

 なんとか踏ん張って、今日1日。

 月経痛と戦いながら、今年初めてのプールの授業は休んでも。

 他の授業は、保健室にも行かずにがんばれたことは、がんばれた。






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