【短編】 Sexless-Love
「それで……どうするの?」

 美幸に言われて、僕はつぶやいた。

「冷静に考えてみたらさ。
 僕の好みは女の子に近くて。
 ヤッパリ、僕は本当に女の子だったんだなって……」

「隆也の好みは、そうかもね。
 おまけに、荒っぽいことは嫌いだし。
 ……じゃあ、やっぱり……女の子になるつもりなの?」

「……でも……
 女になったら、コレが、毎月来るんだろう?」

 超鬱陶しい、月経が。

 僕は相当、嫌そうな顔をしているみたいで。

 美幸は、肩をすくめて言った。

「生理って、確かに面倒くさいけど。
 前に、ウチの姉貴が可愛い赤ちゃんを産んでからね。
 そんなに月経も悪くないかな、って思ったのよ」

 でも、その可愛い赤ちゃんとやらを手に入れるためには。

 男に抱かれないといけないわけで。

 他のことはガマンできても、それだけは嫌だった。

 自分が男に触わられるのも。

 男に美幸を取られてしまうのも。

 僕は、思わず美幸を抱きしめた。

「僕は、男のままがいいかな。
 僕、美幸の事が好きだよ。
 僕が男じゃなくなって。
 美幸にお友達でいましょう、なんて言われたら、いやだ。
 僕じゃない、誰かの隣に美幸がいたら……いやだよ」

 美幸を抱きしめる手に力がこもる。

 失いそうになって、初めて判った。

 いつも側にいる美幸は、僕にとって、何者にも変えがたい、愛しいヒトだった。

 大事な美幸をを強く、強く抱きしめると。

 彼女はそっと呟いた。

「嬉しい……
 一年間、ずうっとつき合って、初めて隆也に好きって言われた……」

「……美幸」

 強く抱きしめていた腕を少しだけ緩めて、美幸を見ると。

 彼女は、泣きながら、笑っていた。

「わたしも、ずっと前から好きだったのに。
 隆也は何もしてくれないんだもん。
 キス一のひとつも、まだでさ。
 デートの後に、今日こそは……っていつも思っていたのに……
 わざわざ可愛い下着つけてきてるのが、莫迦みたいで……」

 美幸のぽろぽろととめどなく流れてくる涙に。

 僕の胸は、きゆうっと痛んだ。
 


 





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