この物語はフィクションです
「身バレが怖いし、高校名入れない方がよかったんじゃない?」


「大丈夫でしょ。本垢のリンク貼ってないからバレないって」


用意していた狂子の写真を添付し、凛香が投稿ボタンをタップ。


SNS上に狂子の記事が投稿される。


「……これで投稿完了っ!」


満足げにする凛香が気になって、私もスマホを覗き込んで記事を確認する。


投稿からまだ数十秒。いいねやRTは0のままだ。


「上手くいくのかな? 私、自分のアカウントがバズったの見たことないけど?」


「それは、菜奈の投稿が微妙だからじゃない?」


「ちょっと! 酷いこと言わないでよ!」


「本当のことでしょ」


凛香とふざけて肘で小突き合っていた私は、ふとテーブルの上のものに目を向ける。


ぼさぼさの黒髪のウィッグ、刺すと刃が引っ込む包丁、ぼろぼろで綿が飛び出したうさぎのぬいぐるみ。


衣装に使った白いワンピースと、それを血塗れに見せかけるための赤い絵の具。


どれも狂子になりきるための道具だ。


他にも、ハロウィンの仮装で見かけそうな眼球型のおもちゃや御札、ゾンビメイク用の血糊、水鉄砲やこんにゃくなんかもある。


「凛香、まだ使ってない材料があるんだけど?」


自分も一緒に集めておきながら、何に使うのかわからなかった。


「これって、何に使うの?」


「何って、美桜(みお)を驚かせるんだよ」


水鉄砲を手に取った凛香は、不敵の笑みを浮かべた。
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