この物語はフィクションです
美桜は、慌ててスマホを突き返そうとした。


それを無理やり押し返した凛香が、記事に添付されている写真を見せる。


「ほら見て、この電柱の陰にいるでしょ?」


住宅街の平穏な光景の中に、異様な雰囲気を醸す女。


ぞろぞろと長い黒髪の隙間から、不気味な笑みが見え隠れしていた。


――なんてね。もちろん、これも偽物。


わざわざ暗くなるまで学校のそばで待機して、絵の具で所々を赤黒く染めた白いワンピースに着替えた私が、ぼさぼさの長い黒髪ウィッグを被っただけ。


右手には包丁のおもちゃを、左手にはうさぎのぬいぐるみを持たされ、人目の付かない場所を選んで、狂子が映りこんだ心霊写真に見えるように撮影した。


カメラ担当の凛香の注文が細かいうえに多すぎて、かなり苦労させられた……なんて。


そんなこと知る由もない美桜は、腕を抱えてブルブルと震えだす。


「遠くてはっきり見えないし。こんなのただの噂でしょ?」


簡単には信じてもらえないだろうとは思っていた。


けれど、凛香のSNS拡散作戦が功を奏して、美桜を信じさせるだけの説得力のある記事になっていた。


「でも、すごい数のいいねとRTだよ。ねえ、凛香」


「そうだよ! リプだって投稿されてるし」
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