きみに ひとめぼれ

そうして、勝見君とお土産屋さんに入った。

店内の一角に並ぶ生八つ橋の食品サンプルには、いろんな味があった。

リアルに鞄に張り付いて見えたのは、生八つ橋の裏にピンがついていたからだった。

私は餡の部分がピンク色のイチゴ味にした。


「俺のは黒ゴマなんだよね」


勝見君は楽しそうに笑う。 


私がイチゴ味の一つをとると、勝見君はそれをひょいと取り上げて、すすっと狭い店の奥に行ってしまった。

追いかけると、見通しの悪い店内の曲がり角から勝見君がふっと現れた。

「はい」と目の前にイチゴ味の生八つ橋が指しだされた。


「え?」

「そろそろ時間だし、行こうか」

「でも、お金……」

「いいから、いいから」


勝見君はすたすたと行ってしまう。

勝見君から受け取った生八つ橋を見つめると、胸のあたりがジーンと熱くなった。

お店から出て早速私も鞄につけた。

勝見君が買ってくれた、生八つ橋を。


「無理につけなくてもいいよ」


勝見君は小さく笑って言った。


「いいの。付けたいの」


付け終わって、私はようやく勝見君に言えた。


「ありがとう」


勝見君は、思いっきり目尻を下げて私を見ていた。



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