きみに ひとめぼれ

あいつとは1年の時クラスは違っていたけど、サッカー部が同じなので顔見知りだった。

あいつはめちゃくちゃサッカーが上手くて、なおかつめちゃくちゃサッカー好きだった。

だけど表立ってそんなことは言わないし、上手いからと言って目立とうともしない。

普段からそうなのだ。

行事もあまり積極的に参加しない。

目立つことも嫌い。

うるさい女子は苦手。

面倒なことは人任せ。

とにかく空気になるのが上手いヤツだ。

頭が良くて勉強ができて、いつも成績上位にいるんだけど、空気ゆえに話題にも気にもされない。

つまり、地味男子だった。

あいつは僕とタイプが似ていた。

ただ僕と違っていたのは、とても人懐っこかった。

人当たりが良くて、つるんだりすることはなくても、目立つ奴らと上手くやっていた。

良い意味でいじりやすいのだ。


__「勝見のくせに」


それが、僕たち男子の中でのあいつの立ち位置だった。



「よお、園田」


いつもそうやって、後ろから背中を渾身の力でたたいて僕を呼び止める。

あいつは細身の長身でひょろりとしているのに、その外見のどこにその馬鹿力が隠されているのか不思議なくらいの力を出す。

あいつに呼び止められたときは覚悟がいる。

とにかく、背骨が折れそうなくらい痛いから。

だけど僕は知ってる。

あいつの腕にも足にも、ちなみに腹にも胸にもしっかりと筋肉がついていることを。

肩幅はそんなにないんだけど、服を脱いだ時の後ろ姿は素晴らしい逆三角形で、天使の羽までくっきりと見える。

つまり、引き締まっているのだ。

男の僕が見ても、美しい体型だった。

体育や部活で着替えるときに、ふとそのできあがった筋肉質な体を見てドキリとする。

残念ながら、恋愛とか彼女とか、縁のない男なんだけど。

そう言う僕もそうなんだけど。


だけど僕はやがて知ることになる。

あいつが、坂井さんに恋をしていることを。


< 114 / 166 >

この作品をシェア

pagetop