きみに ひとめぼれ

 あいつが手を伸ばす。

 彼女との距離が縮まって、そっと彼女の肩に触れた。

 その手は信じられないほど優しかった。

 僕の時とは全く違う力強さ。

 見とれてしまうほど、恥ずかしいほど、彼女への愛おしさを感じた。


振り向いた彼女は驚いていた。

二人がどんなやり取りをしているかはわからない。

ただ二人は歩調を合わせて歩いていた。

でもその距離は、なんだか微妙で、遠くから見ている僕にもぎくしゃくしているのがわかる。

だけど次第にその距離が縮まっていく。

いつも通りの、あいつの笑顔がちらりと見えた。


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