きみに ひとめぼれ
もう、気づいてるよね?
今さら何言ってんだって思うでしょ?
でもしょうがないじゃん。
言葉にするのだって、恥ずかしいんだから。
だって、それは全然僕らしくないから。
恋なんて。
一目惚れなんて。
毎日悶々とした日々を送るなんて。
青春なんて。
甘いひと時なんて。
彼女と出会ったあの一瞬が、僕にそのすべてをもたらすなんて、思いもしなかったんだ。
僕みたいな地味な男子に、一目惚れから始まる恋なんて、そんな「運命」みたいなことありえないのに。
だから、知らん顔をしていたんだ。
その気持ちを、無視し続けた。
でも、もっと素直にこの気持ちと向き合えてたら、受け入れられてたら、何か変わっていただろうか。
そしたらもっと、近づけたのかな、あいつみたいに。
もう少し手を伸ばしたら、僕にも届いただろうか。
あのさらさらとした髪に。
あのすらりと伸びた細い指に。
あの華奢な肩に。
__「園田君」
思い出の中で僕の名前を呼ぶ彼女の声が、心の中で反芻しては朝の冷たい風とともに遠くの方に流されていく。