きみに ひとめぼれ
部室棟の横をずっと奥に行ったところにゴミ捨て場がある。
ゴミ捨て場までの道順を聞いて、誰もやりたがらない理由が分かった。
ただひたすら遠い。
いつも面倒なことからはさっさと逃げているから、当然掃除当番も真面目にやったことはない。
必然、ゴミ捨ての場所も、ゴミ捨てをするという掃除当番の仕事さえ知らなかった。
もう高校二年生の10月末だというのに。
広瀬に「掃除当番なんだからゴミ捨てに行ってこい」とゴミ箱を押し付けられて、何の疑問も抱くことなくここまで来たけど、違和感しかない。
だって俺は、掃除当番ではない気がするから。
通いなれた運動部の部室を通り過ぎると、テニス部のコートがあった。
スコーンと気持ちのいいラリーの音が響いている。
テニスコートを取り囲むフェンスには、キャーキャーとはしゃぐ女子たちの姿があった。
彼女たちの視線の先を追いかけると、そこにはキラキラと輝く本田がいた。
彼女ができたというのに、まだ多くの女子に人気とは。
俺は足を止め、そんな女子たちの隣で、じっと爽やかな本田を見つめた。