きみに ひとめぼれ
私と勝見君



 一目惚れから始まる恋って成就すると思う?



そもそも、「一目惚れ」っておかしいと思わない?

一目見ただけで相手を好きになるって。

だって、相手のことを何も知らずに好きになるってことでしょ?

相手のことを何も知らないのに恋が成り立つって、やっぱりおかしい。

恋愛って、相手のことを知って、仲良くなって、「友達」している間に好きになって、相手にも自分のことをよく知ってもらって、お互いの気持ちが通じ合えば付き合うもんでしょ? 



 違うの?


 
一目惚れは順番が違う。

「好き」が先。

一目見ただけで恋に落ちるなんて、それはただの面食いだ……私のような。

そうじゃなければ、それはもう本当に、運命。


そういう私の恋の始まりは、いつだって、一目惚れからだった。

面食いなんだから、仕方ない。

だけどそのどれも成就しないんだから、それらは運命の恋ではなかった、もしくは、「一目惚れから始まる恋なんて、成就しない」ということだ。


まあ百歩譲って一目惚れから恋が始まってもいいとしよう。

そうだとして、どうやって相手に近づけばいいの?

だって、もう相手こと、「好き」なんだよね?

意識しすぎて話しかけるどころか近づけないじゃない。

遠くから眺めるしかないじゃない。

しかもイケメンって近づきにくい。


面食いなのに、イケメンは苦手。

そんな矛盾を抱えて恋が成就するわけがない。

だけど、イケメンにときめいてしまう。



 はー……。




別に男子と話すのが苦手とか、奥手とかそういうわけではない。

意識しているか、していないかの問題だけ。

だから肝心のお目当ての男子とはお近づきになれなくても、特にタイプでもない男子となら平気で話すことができる。

だいたい地味で目立たない、物静かな男子。

もちろん、イケメンでもない。

話すと言っても、必要最低限。

日常会話とか授業の話し合いとか。

イケメン男子とは、そんな最低限の会話すらできない。




 つまり、勝見君は、そういう男子だったのだ。


 イケメンでもない、目立たない地味な男子。



 だからあの時、無意識に彼に触れることができたのだ。

 まさか、こんな気持ちになるとは思いもせずに。



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