きみに ひとめぼれ


「おい、勝見」


 その声に自然と顔がそちらを向いた。

 その声が、始まりの合図だった。



 二学期初日、始業式。

久しぶりの学校でもうきうきしていられない。

なぜなら、始業式の後はテストがあるから。

みんな廊下に出て教科書とにらめっこしている。

私もその一人。

でも、一か所だけ妙に騒がしい。

男子たちがじゃれ合っている。

そこに、勝見君もいた。

目尻を下げて楽しそうにしている。

もう諦めているのだろうか。

教科書を開こうともしない。


男子はいいな、何も考えてなさそうで。

でも、そんなところが羨ましかったりする。


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