きみに ひとめぼれ
9月はまだ暑い。
教室のクーラーはガンガンに稼働していて、扇風機がその右腕として首を動かして冷たい空気を教室の隅々まで送り届ける。
よく働いていた。
教室の隅にいる私のところにさえ、ちゃんと風が回ってくる。
天井にある扇風機から送られてくる風の軌道を目で追いかけた。
目には見えないんだけど、一番後ろから見るみんなの背中や頭を眺めると、それが見える気がする。
カッターシャツが何となく膨らんで見える様子や、頭の頭頂部当たりの髪の毛がふわふわと揺れる感じとか。
目の前の勝見君の寝癖っぽい髪も、その風に気持ちよさそうに揺らいでいる。