君のとなりで恋をします。─下─
「香純、大丈夫?」
「う、ん…ありがとう。」
柊吾の顔が見れない…。
周りの視線が気になる。
……顔を上げるのが怖い。
「香純、帰ろう!」
「うん。」
私の手を引く咲花について歩く。
「────…柊吾ー。
あの人何しに来てたん?修羅場ー?」
野次馬のうちの一人の声に、思わず肩が跳ねる。
そんな私に気づいてか、咲花は歩くスピードを速めた。
「修羅場じゃないよ。
…俺もあの人も、ただ香純を心配してただけ。」
〝頼むから変なウワサは広めるなよ〟と野次馬たちに釘を刺す彼の声が背後から聞こえた。
どうしよう…
泣きそう…
鼻の奥が熱くなって、咄嗟に上を向く。
どんよりとした灰色の空に滲む月明かりが、やけに眩しかった。