君のとなりで恋をします。─下─
それからの帰り道は、お互いに無言だった。
たぶんお互いに、会話をすることに慎重になりすぎていたんだと思う。
できるだけ踏み込みすぎないように…
幼馴染みという線を越えないように。
「あ…着いたね。」
「うん、ありがとう。
気をつけて帰ってね。」
私が手を振ると、柊吾は何かを考え込むようにその場に立ちつくす。
「柊吾…?」
不思議がる私に、彼は数回目を泳がせて、意を決したように口を開いた。
「あのさ…桃奈のこと…」
その名前が出た瞬間、私の胸は低く鳴る。
いやだ…
柊吾の口から、その名前は聞きたくない。
「あっ…えっと…その話、今度でいいかな?
私、勉強しないとやばくて…」
笑ってはぐらかそうとするけど、柊吾は見逃してくれなかった。