君のとなりで恋をします。─下─
「自分では気づいてないかもしれないけど…
あんたはいい奴だよ。本当に。」
…やめろ。
本当にいい奴なら、柊吾と一緒にいるお前を見て、イライラしたりなんてしない。
…心の底から、お前の幸せを願えるはずだ。
「桜河。いつもありがとう。」
「…やめろよ。」
満面の笑みでそう言う彼女。
その笑顔に、自分の中で何かが弾けたように感じた。
「…っ…くそが…!」
「…わっ!?」
俺は思わず彼女の華奢な腕を引き寄せて、自分の腕の中に収めていた。
力を込めるとすぐに折れてしまいそうな細い体を、できるだけ優しく…
だけど逃がさまいと、力強く抱き締めた。
「ちょっ!?……急にどうしたの?」
服越しに伝わる彼女の体温。
鼻をかすめるシャンプーの香り。
もう、限界だった。
気持ちを隠すのも、彼女の恋を応援する男を演じるのも…