君のとなりで恋をします。─下─
「───桜ちゃんが私の好きな人だから?」
「…!」
驚いて顔上げ私に、咲花は小さく笑った。
「香純らしいな…。
他人のために自分感情押し殺しちゃって…
…そういう所が、桜ちゃんは───…」
「え…?」
よく聞こえなくて聞き返すと、咲花は「なんでもないよ」と笑う。
「…私ね、もう桜ちゃんにフラれてるんだ。
好きな人がいるんだって。
…だから、香純が私のことを気にする必要なんて無いんだよ?」
柔らかい笑顔でそう告げる咲花の表情は、どこか切なげで…
鼻の奥がツンと熱くなって、視界が徐々に歪んでいくのがわかった。
これは何の涙なんだろう?
私も恋の終わりの辛さを一度経験してるから…
咲花への同情?…共感?
いずれにしても、私が今ここで泣くのは間違っているから…
上を向いて、必死に涙を押し込めた。