君のとなりで恋をします。─下─
「葵斗。
あいつの200m自由形の結果、知ってる?」
「ん?いや…」
「優勝したよ。
…大会新記録を叩き出してね。」
「まじかよ!すっげぇ!」と興奮する葵斗を他所に、私は桜河のレースに集中する。
1位の人から少し遅れを取ってターンした桜河。
彼の手が力強く水を掻き分ける様子とか、激しく上がる水しぶきとか…
その全てがキレイだと思った。
みるみるうちに差を縮めていく桜河。
最後のターンに差し掛かるタイミングは、もうほとんど同じで…
あと少し…
あと少しで…
「影山ー!ファイト!!」
「桜ちゃんっ!!」
「桜河ー!!いけー!!」
「頑張れ!」
白熱していく1位争いに、客席からの応援もヒートアップしていく。
その周りの声援に掻き消されないように、私は精一杯の声で叫んだ。