君のとなりで恋をします。─下─
中は薄暗く、湿っぽい。
ガラス張りの天井から差し込む厚い雲に隠れたはずの月明かり。
電気も付けられていないその室内では、僅かな月明かりがやけに明るく感じる。
だだっ広いスペースには、真ん中に大きなプールが設置されていて…
その大きなプールの中で、ただ仰向けに浮く男が1人。
「…桜河。」
「…香純?」
声を発してようやく私の存在に気がついた桜河は、バシャッという音を立てながらゆっくりと足をつける。
「…なんでここに?」
「あんた、どうせ傘持ってないでしょ?
風邪ひきそうだから、迎えに来たの。」
可愛げもなくそう言う私に、桜河は嬉しそうに笑った。