君のとなりで恋をします。─下─
「…傘なんて、ただの口実なんだ。」
下を向いてポツリと呟く。
気づいたら、そんなことを口走っていた。
「口実…?何それ?」
唐突にそんな発言をする私に、桜河は水に浮いたまま、目線だけこちらに向けて尋ねた。
雨が降ってることなんて、本当はただここに来るための口実で…
本当はね…
「…本当は、1秒でも早く桜河の顔が見たかったから……」
今度は、彼をじっと見つめながら言った。
早く会いたかった。
目を見て話したかった。
私の言葉を聞くと、彼はザバァと大きな音を立てながら立ち上がる。
そして驚いたような顔でこちらを見つめていた。
「ふはっ…照れてる〜。」
「うるせぇ。照れてねぇよ。」