君のとなりで恋をします。─下─










ゆらゆらと揺れる水面に、微かな月明かりがぼやけて映る。




綺麗に割れた腹筋とか、濡れた前髪を鬱陶しそうにかきあげる仕草とか…

水が滴る髪から覗く真っ直ぐな瞳が、私を捕らえて離さない。






私も普段とは違う色っぽい桜河に見惚れて…

息をすることさえ忘れてしまう。







外の雨音だけが聞こえる夜のプール。

まるでこの世界に私と桜河しかいなくなったような感覚。




普段は耳障りに聞こえる雨の音が、なぜか今日は心地よく感じた。











「桜河…」










小さく呼んだ彼の名前が、広いプールに響いて…

そして直ぐに雨音に掻き消される。





だけど、しっかり桜河の耳には届いていたようで…








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