君のとなりで恋をします。─下─
ゆっくり、静かにこちらに歩み寄る。
桜河が動く度に、小さな水音が耳に響く。
目の前までやって来た彼は、遠慮気味に私の手を握って…
私もそんな彼の手をそっと握り返した。
「香純…」
私の目をじっと見つめる桜河。
プールサイドに腰かける私と、プールの中にいる彼。
背が高くていつも見上げているはずの彼が、今は私より少し下の目線にいて…
私は腰を前にかがめて、彼の首に腕を回した。
彼の濡れた髪と肌が、私が着る薄手のTシャツにシミを作る。
ドクン…ドクン…という彼の鼓動が、彼の体温が…
いつもより1枚少ない布越しに伝わってくる。