君のとなりで恋をします。─下─
「…おい。服、濡れる。」
そんなことを言いつつも、私の背中にそっと腕を回す桜河が何だか愛おしく感じて…
私も、彼に回す腕の力をギュッと強めた。
「…桜河。」
「ん?」
「優勝おめでとう。
…今日、すっごくカッコよかったよ。」
「…ん。ありがと。」
塩素の香り、濡れた肌の質感。
どちらも泳げない私にとっては、縁があるものでは無いのに…
なんでだろう…すごく落ち着く。
私は上から下へゆっくりと、彼の濡れた髪を数回撫でる。
すると、私の背中に回された彼の腕に少しだけ力が込められたのを感じた。