君のとなりで恋をします。─下─
「…香純。」
彼の声が、広いプールに響いた。
「ん?」
「…キスしたい。」
雨音にかき消されそうな声。
…だけど、私の耳にははっきりと届いた。
少しだけ恥ずかしそうに私の胸元に顔を埋めるところとか…
私のTシャツを軽く握る仕草とか…
そのすべてが何だか可愛く思えて…
〝幸せにしたい〟
柄にもなくそんなことを思ったんだ。
「…私もしたい。」
私がそう言うと、桜河は一度腕の力を緩めて少しだけ体を離す。
だけど未だに私の腕は、彼の首に回されたままで…
必然的に、至近距離で彼と目が合う。