君のとなりで恋をします。─下─
俺は扉の影に息を潜めて、ただ二人の会話を聞いていた。
…というよりも、二人の前に出ていくことが出来なかった。
俺がずっと聞きたかった香純の本音。
だけど香純は、いつも自分の中にある負の感情を笑顔で取り繕う。
でもそれを…桜河はいとも簡単に引き出したんだ。
俺は桃奈から受け取った川上高校のデータを、香純の荷物の上にそっと置いて体育館を出た。
いざという時、香純が頼るのはいつも桜河。
俺は、そんなに頼りないんだろうか…
……いや、ちがう。
今、香純を苦しめているのは俺自身だ。
力になりたいとか、支えてやりたいとか…
それ以前に、俺が彼女を傷つけている。
それに気づいた時、なぜか目頭が熱くなった。