君のとなりで恋をします。─下─
「小鳥遊葵斗、いる。松井岳、いる。
…黒瀬柊吾は────…」
そこまで言うと、ひとつの足音がこちらに近づいてくるのを感じる。
…まずい。どうしよう…
近づかれたら、バレる……。
私は自分の息を止めるように、口元を両手で押えた。
「…せ、先生!柊吾のこと起こさないでね!
あいつ、寝起きは超機嫌悪ぃから。」
葵斗のその声によって足音はピタリと止まり、そしてゆっくりと遠ざかって行った。
「ふーん。じゃあ、いいか。
…明日、8時から朝飯だからなー。」
〝遅れるなよ〟と言いながら部屋を出ていく先生の様子を、音で感じ取る。
───…ガラガラ…ピシャン…という扉が閉まる音を聞いて、ようやく私たちは安堵のため息をついた。