君のとなりで恋をします。─下─
そう自分に言い聞かせながら視線を上げると、不意に柊吾と目が合う。
「っ…」
何かを伝えたそうにこちらを見つめるその瞳に、私は咄嗟に視線を逸らした。
このままいつも通り過ごせば、忘れられる。
あの出来事を誰にも話さずに、私の中だけで留めておけば…
……本当に?
本当にそれで忘れられる?
誰にも何も伝えないって…桜河にも?
本当に、それでいいの?
色んな考えが次々頭に流れ込んできて、グルグルと回る。
「うっはー!電車の中涼しいー!
あ、あそこの席空いてる!咲花座れば?」
「えー、私はいいよ。香純は────…
…香純?どうしたの?」
ぼうっとする私の顔を、咲花は下から覗き込む。