君のとなりで恋をします。─下─
〝元カレに抱きしめられました〟なんて…
桜河に伝えたところでどうにもならない。
だけど…隠されることでどれだけ傷つくかを私は柊吾との恋で学んでる。
あんなにも優しい人を、傷つけていいはずがない。
「…みんな、ごめん!」
───ドアが閉まります。ご注意ください。
そのアナウンスの直後、私は隣にいた桜河の手を引いて電車から飛び降りた。
「え、香純!?」
困惑する咲花の声と、プシューとドアの閉まる音がほぼ同時に聞こえた。
3日目と4日目は5人で行動しようって約束してたのに…
咲花もそれをすごく楽しみにしていたのに…
私の事情で勝手なことをして本当にごめん。
ゆっくりと動き出す電車の扉越しに、こちらを見つめる柊吾と目が合った気がした。
去っていく電車を見送る私と桜河の間には、数秒間の沈黙が流れる。
その沈黙を破ったのは、少しだけ困ったような桜河の一言。