君のとなりで恋をします。─下─
「香純。とりあえず手離せ。
同じ学校の奴らいる。」
そう言いながらそっと手を離そうとする桜河に対して、私は意地でも離すまいと両手で彼の手をぎゅっと握る。
「…おい────」
「見られてもいい。
誰に何言われても、私は桜河の彼女なの。」
その言葉は桜河に対して向けられたもので…
それと同時に、自分自身に言い聞かせた言葉でもあった。
真っ直ぐと目を見てそういう私に桜河は少しだけ驚いて…
そして呆れたように笑って私の頭を撫でた。
「このまま、二人でどっか行くか?」
ドアが閉まる直前に電車から飛び降りた私たち。
きっと桜河も、私があの場にいたくなかった理由があるのだと察してくれているのだろう。
「うん。行く!」
即答でそう答える私に、桜河は優しく笑った。
「俺から葵斗に連絡しとく。」
「ありがとう。」
桜河は制服のポケットからスマホを取り出し、慣れた手つきであっという間に文字を打つ。