君のとなりで恋をします。─下─
「…香純はどう思った?」
「え?」
「柊吾に抱きしめられて…
ヨリ戻したいとか、思わなかったわけ?」
私の目をじっと見つめながらそう言う桜河に、私はすぐさま首を横に振った。
「そんなこと、思わなかった。」
たしかに動揺はしたし、ドキドキした。
だけど〝桜河と別れて柊吾とヨリを戻したい〟なんてことは、これっぽっちも思わなかった。
「私が今1番大切なのは…桜河なの。」
「そっか。」
桜河を傷つけたくない。悲しませたくない。
思えば柊吾に抱きしめられた時、真っ先に頭に浮かんだのは桜河の顔だった気がする。
桜河が、自分の感情を押し殺すときに無理やり歯を見せて作る笑顔。
…私の大嫌いなあの表情。
もう絶対に、桜河のあんな顔は見たくないの…。
桜河には、いつでも心の底から笑っていて欲しい。
それが私の本音だった。