君のとなりで恋をします。─下─








「…香純はどう思った?」




「え?」





「柊吾に抱きしめられて…

ヨリ戻したいとか、思わなかったわけ?」









私の目をじっと見つめながらそう言う桜河に、私はすぐさま首を横に振った。











「そんなこと、思わなかった。」









たしかに動揺はしたし、ドキドキした。

だけど〝桜河と別れて柊吾とヨリを戻したい〟なんてことは、これっぽっちも思わなかった。









「私が今1番大切なのは…桜河なの。」





「そっか。」










桜河を傷つけたくない。悲しませたくない。


思えば柊吾に抱きしめられた時、真っ先に頭に浮かんだのは桜河の顔だった気がする。




桜河が、自分の感情を押し殺すときに無理やり歯を見せて作る笑顔。

…私の大嫌いなあの表情。




もう絶対に、桜河のあんな顔は見たくないの…。

桜河には、いつでも心の底から笑っていて欲しい。





それが私の本音だった。













< 303 / 495 >

この作品をシェア

pagetop