君のとなりで恋をします。─下─
柊吾は、私が転ばないように支えてくれただけなのに…
変に意識して、その優しさを踏みにじってしまった。
でも、だめなんだ…
腰に回された腕が、ワイシャツ越しに伝わる彼の体温が…あの夜を思い出させるから…
─────「…いるよ。好きな人。」
あの夜の彼の熱を帯びた真っ直ぐな瞳と、少し掠れた低い声がフラッシュバックする。
私はそれを振り払うように、頭を振った。
「成宮、大丈夫?
どっかぶつけた!?」
そう声をかけられて初めて、柊吾の隣にいたまっつんの存在に気がつく。
…そして、二人の一歩後ろでこちらを見据える桃奈さんにも……
それくらい、柊吾にしか意識が向いてなかったんだな…。