君のとなりで恋をします。─下─
「今日、夕方には練習終わる…。」
目線を逸らしながらそれだけ告げた桜河。
だけど私には、彼が何を言いたいのかがわかった気がした。
「うん!
桜河の部屋で待ってるね!」
私と桜河の日課。
同じ部屋でただ喋ったり、お互い別のことをしたり、勉強したり…
特別なことなんてしなくてもいい。
同じ場所で同じ時間を共有する。
そんな何でもない時間が、何よりも大切で、心地良いんだ。
私の言葉に桜河は嬉しそうに笑うと、再びプールサイドを駆けて行った。
私はその後ろ姿をじっと見つめる。
ねぇ、桜河。知らないでしょ?
私…ほんの少し前までは、将来の夢とかやりたいこととか、そんな良いモノなんて持ってなくて…
将来のことを考えると先の見えないトンネルみたいで…自分がちっぽけな人間に思えた。
だけど…
そんな私を、桜河が変えてくれた。
桜河が、私に夢をくれたんだよ。