君のとなりで恋をします。─下─
…そうだよね。
ボールを磨きながらでも、なんとなくは試合様子も見れるし…
選手同士の掛け声や周囲からの声援。
汗まみれになりながら走る姿や、悔しそうに顔を歪めるその表情も…
全てが懐かしくて、この体育館で過ごした思い出を蘇らせる。
「はぁ、松井くんカッコイイなぁ。」
まるちゃん、さっきからそのボール同じ所しか拭いてない…。
まぁ、好きな人が目の前でスポーツやってるんだもんね。
そんなの、釘付けにならないわけが無い。
完全に目がハートになってる彼女を横目に、私はボールを磨く速度を上げる。
このセットが終わったら帰るつもりだし…
あの子の仕事を私がやるのはなんだか癪だけど、これは柊吾のためだ。
できるだけ多くのボールを磨いて帰ろう。
時折発せられるまるちゃんの歓声にも反応しつつ、私は久しぶりのマネージャー業に没頭した。
こうして一つ仕事を始めてしまうと、
〝このボール、若干空気少なくない?〟とか〝なんか床が汚れてる〟とか…
色々なことが気になってしまうのは、もう職業病のようなものなんだと思う。