君のとなりで恋をします。─下─







…そうだよね。

ボールを磨きながらでも、なんとなくは試合様子も見れるし…






選手同士の掛け声や周囲からの声援。

汗まみれになりながら走る姿や、悔しそうに顔を歪めるその表情も…


全てが懐かしくて、この体育館で過ごした思い出を蘇らせる。









「はぁ、松井くんカッコイイなぁ。」







まるちゃん、さっきからそのボール同じ所しか拭いてない…。


まぁ、好きな人が目の前でスポーツやってるんだもんね。

そんなの、釘付けにならないわけが無い。





完全に目がハートになってる彼女を横目に、私はボールを磨く速度を上げる。



このセットが終わったら帰るつもりだし…


あの子の仕事を私がやるのはなんだか癪だけど、これは柊吾のためだ。

できるだけ多くのボールを磨いて帰ろう。







時折発せられるまるちゃんの歓声にも反応しつつ、私は久しぶりのマネージャー業に没頭した。





こうして一つ仕事を始めてしまうと、

〝このボール、若干空気少なくない?〟とか〝なんか床が汚れてる〟とか…

色々なことが気になってしまうのは、もう職業病のようなものなんだと思う。










< 371 / 495 >

この作品をシェア

pagetop