君のとなりで恋をします。─下─
そしてその夏のある日。
珍しく父が私に話があると言った。
再婚するという旨の報告だった。
相手は中学二年生の息子がいるシングルマザー。
ふーん…弟ができるのか。
まぁ、どうでもいいけど…
そんなことを考えていると、父から発せられたのは予想外の言葉で…
「相手の女性には年頃の息子さんがいるんだ。
姉弟間でもしもの事があってもいけないし…悪いけど、お前とは一緒に住めない。」
どうやら父は、自分を裏切った母そっくりな私と一緒に生活することに対して、ずっと苦痛を感じていたらしい。
「お前はこれから親戚の家で暮らしてもらうことになるけど…」
表情だけは申し訳なさそうに、だけど口調は淡々としている。
そんな父を、私はただじっと見つめていた。
別に、今更悲しくなかった。
だって元々家族関係なんて壊れきっていたようなものだし…
そんなものよりも、私が何よりも必要としているのは柊くんで…
そこで私は、この〝不幸な状況〟を最大限利用してやることにした。
私が再婚を認める代わりに出した条件は…
〝水瀬桃奈を、黒瀬家に引き取ってもらうこと〟だった。