君のとなりで恋をします。─下─
「香純。
もうすぐ9時になるけど、時間大丈夫?」
「あ、やばっ!そろそろ帰んなきゃ!」
柊吾に言われてスマホの時計を見ると、時刻は20時45分。
お母さんに遅くなることは伝えてあるけど、〝9時には帰ってきなさい〟って言われてたんだ…。
「えー、成宮帰んの?」
「うん、先に帰るね!
今日は楽しかったよ。ありがとう。」
みんなに手を振ると、私はスクールバッグを手に持って大部屋を出た。
たくさんの部屋や長い廊下。
この旅館には何度も来てるけど、この広さに迷いそうになるのはいつものこと。
私は一度立ち止まって玄関の方角を考えると、そちらに向かって早足で歩き出す。
そして、そんな私の後を追ってきた人物が一人…