君のとなりで恋をします。─下─
「待って、香純…。送っていく。」
そう言って私の手を掴むのは、もちろん柊吾で…
「えー、いいよいいよ。
せっかくの引退会なんだから、柊吾はみんなと一緒にいなよ。」
ここから私の家まで歩いて、片道約15分。
往復だと30分ほどかかってしまう。
こんな大事な会に、キャプテンである柊吾が不在になるなんて…
しかし柊吾は、こんなときだけはいつも頑固で…
「もう夜も遅いし…
街灯も少ない夜道を香純一人で歩かせられるわけないでしょ。」
「ダッシュで帰れば大丈夫だよ!」
「そういう問題じゃない。
何かあったたらどうすんの。」
やっぱり今日も、柊吾は引き下がらない。
昔からずっと変わらないな…。
心配性で、優しくて…
当たり前のように自分のことより他人を優先しちゃう人…。
昔から誰よりも、私を女の子扱いしてくれるのはこの人だった。
「じゃあ、お願いします…。」
「うん、任せて。」
結局いつも、私はこの優しさに甘えてしまうのだ。