君のとなりで恋をします。─下─
そして曲がり角を曲がって柊吾の姿が見えなくなると、私はそっと玄関のドアを開ける。
「…ただいま。」
リビングまで聞こえる程度の声でそう言うと、何やら騒がしい足音が聞こえてくる。
「姉貴、おっそい!!」
私を出迎えたのは、弟の楓真。
久しぶりに見た弟は、少しだけ背が伸びたような気がする。
普段は寮生活を送っている楓真だけど、ここにいるってことは週末の部活は休みなのだろう。
「帰ってたんだね。おかえり。」
にこやかにそう言う姉に対して、弟はなぜか興奮気味。
「〝おかえり〟じゃねーし!
桜河くん、さっきまで家に居たのに!」
「え……?」
桜河が…?
楓真の言葉に、自分の耳を疑う。
以前なら、桜河が我が家に居座るのなんて日常茶飯事だったけど…
だって、あれから家の行き来なんて全くなかったし…
それどころかまともに話すらしていない。