君のとなりで恋をします。─下─
「…あ、えっと…そろそろ行こうか!
電車来ちゃうよねっ!!」
そう誤魔化して、彼から顔を背けた。
ごめんね、柊吾!
不可抗力とはいえ、他の男の人と密着しちゃって…
駅までのわずかな道のり。
私たちはお互いに何も喋らなかった。
「…じゃあ、ここで。」
駅の改札の前で彼は立ち止まる。
休日の午後3時でも、田舎の駅には人はまばらにしかいない。
「今日は本当にありがとう。
ハンカチ、大切に使うね。」
「いえ、こちらこそ…
ごちそうさまでした。」
そう言って市原くんは深々と頭を下げる。