泣いて、凪いで、泣かないで。
「そうだ。テレビ見よう。このナビさんで見られるんだよ」

「へぇ、そうなんだぁ。すごいですねぇ」

「しかもね、この車、バックモニター付きで......」


汐衣愛は、浪費オヤジの話をキラキラした瞳で見つめている。

おそらく無意識なのだろうが、汐衣愛は良く人を誉め、何にでも興味を示す。

それがきっとどんな人の心にも響き、人を寄せ付けるのだと思う。


「おお、映った映った。しかも、丁度ここの海岸が中継されてる。あぁ、もっとこっちだと店が見えるんだがなぁ」

「とりあえず、今のところは波が堤防をこえることは無さそうですねぇ」

「そうだね。ひとまず、安心だね」


でかい津波が来ない限り、家が波で飲み込まれることはないとは思うが、こんなに大雨が降り続けると、悠長に構えてもいられない。

実際に屋根裏は雨漏りしているわけだし、家が浸水しないとも限らないから。


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