泣いて、凪いで、泣かないで。
「ねえ、ゆっと。ちょっといい?」


夏綺が俺の腕を掴んで、ずんずんと引っぱっていく。

壁際まで連れて来られて、俺はひたすら地面を見た。


「ゆっと、顔上げて。別に怒ってる訳じゃないから」

「いや、夏綺だって怒りたい時はあるだろ?それが今、俺に対してなら、殴ってもらったって構わない。ただ、その前に謝らせてくれ。本当に今日はごめん。煌人とのデート邪魔して。本当にごめん」

「謝らなくていい。ワタシに謝るくらいなら、もっとちゃんと...ちゃんとね、みなに謝ってほしい」


夏綺は大人だ。

怒ってても怒らない。

それに、大事な友達の心配までしてる。

本当に敵わねえよ、夏綺には。


「ゆっとに聞きたいことがある」


夏綺が俺の瞳を覗き込む。


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