泣いて、凪いで、泣かないで。
さよなら、海、キミ。
8月20日、私は青空ちゃんのところに行った。

あの日帰ってすぐに布団に潜り込んで泣いてしまい、翌日は目が蜂に刺されたみたいにパンパンに腫れ、とても出掛けられる感じではなかった。

それからもなんだか気分が鬱々としていて、重い腰をあげ、さあ行こうと決心したのが昨日の夕方。

そして、あの日から大分日が経った今日になってしまった。

私は面会時間に合わせてやって来たのだけれど、青空ちゃんは先客と一緒だった。

青空ちゃんの隣にいる男の子は、すらっとしていて、横顔が彫刻のように美しかった。

おそらくこの人が青空ちゃんの話にちょこちょこ出てきていた、幼なじみだ。

2人で話しているみたいだし、邪魔にならないところにいよう。

私は遠くのベンチに腰かけ、そこから2人の様子を見ていた。

青空ちゃんが必死に男の子に何かを話しているのが分かる。

男の子は頷いたり、首を振ったりしながら話を聞いていた。

やがて青空ちゃんが立ち上がり、男の子の背中をバシッと叩いた。

男の子は一瞬振り返ったけど、その後は1度も振り返らず、走ってエレベーターの方に向かって行った。

私は、なんとなく状況を悟った。

この状況で私が出ていって大丈夫だろうか。

今はそっとしておいた方が良いんじゃ...。

と、そう思ったその時だった。


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