泣いて、凪いで、泣かないで。
「わ、わわ、私はイチゴのタルトとコーヒーをお願いします!」


噛みながらも必死に注文したのは、タルトだった。


「んじゃ、俺も同じので」


ゆっとも同じものを注文してくれた。

大人への第1歩で、この時初めて砂糖を入れずにコーヒーを飲んだ。

あまりにも苦くて、渋い顔をしたらゆっとに笑われた。


「美凪、なんだよその顔!」

「しょうがないじゃん!だって砂糖なしで飲むの初めてなんだよ!」


そんな私を冷ややかな目で見つめながら、ゆっとはしれっとした顔でコーヒーを飲んでいた。

あまりにもムカついたから、私はタルトにかぶりついた。

そしたら、スカッと一瞬でイライラもムカムカも口の中の苦味も消えた。

タルトが甘酸っぱくて、私の心と共鳴した。

美味しくて体が震えるというのはこういう感覚なのだと実感した。


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