無気力さんと同居するらしい
自転車を派手に壊した中学の夏
確かその日も今日みたいに台風が近くて、雨こそ降ってなかったけど風がとても強かった
それで駐輪場に止めておいた自電車がドミノ倒しに巻き込まれて
私の自転車のチェーンが切れてしまったんだ
修理に時間がかかるって言われて、自転車通学の私は一週間だけバスで学校に通うことになった
真夏
蝉の声が本当にうるさい頃
初めてバスで学校へ行く
謎の緊張と一緒にバスを待ってた
炎天下で待ったバスの中は涼しくて、乗ってる人も少なかったからリラックスできた
一番後ろの席に座ろうとしたけど
その席には学ランを着た黒髪の男の子が座っていたから一つ前の席に座った
その男の子は私が降りる一つ前のバス停で降りるボタンを押した
そして私の横を通り過ぎて行った、時
ポトンと、黒い定期入れを落とした
ーーありゃ、落としちゃったよこの人
ーーあれ…気づかなかった?
スタスタと進んでいく背中を見つめた
ーーこれ、無くすとまずいやつなんじゃないの?
いやらしく手の届くところに落ちていたから
私はその定期入れを拾った
「あのー落としましたよ」
まさか声をかけられるなんて思っていなかったのだろう
少し遅れて、丸い目で私を見た
次にその視線が私の手元に移り、もう一度私の目に戻った
「ああ…」
彼は差し出した定期入れを受け取った
「ありがとう」
決して綺麗な、魅力的な笑顔ではなかった
だけど
作ったような笑みではなかったのが、意外だった
「どういたしまして!」