無気力さんと同居するらしい


渡した瞬間に少しだけ触れた指先同士

そして、交わった視線

ちゃんと覚えているようで、曖昧なようで

よくわからなくなる


定期を受け取った彼は背を向けた

だから私も席に戻ろうとした


…でも

何故だか自分でもわからないけど

その時の私は何を考えていたのか

足を止めて、振り返ったんだ


「あの」
「あの」


そしたら、どういうわけか

視線の先の彼も振り返っていた

そして再び目が合って

声が重なった


静かで、人の少ないバスの中

私たちのかすかな笑い声が響いた


「ねぇあんたさ、明日もこのバスに乗る?」

「多分乗ると思う」

「…そう。じゃあ、また明日」


その日の会話はそれだけだった

去り際に彼はまた笑った


ーー多分…じゃなくて、絶対明日もこのバスに乗ろう

そう思った


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