無気力さんと同居するらしい



「もー寝るの?」

髪の毛を乾かした後、部屋に戻ろうとしていた私に真琴くんが言った


「まぁ、部屋の片付けも兼ねて戻ろうかと」

まだ整頓できてないんだよね

地味に散らかってる

「あそう」

「おやすみなさい」

「…ん」

フイと顔を逸らしてしまった真琴くん

髪の毛とかにはサラッと触れるのにこういうところはまだまだなんだな


……。

部屋を出ようとした足を止める

…一応、言っておこう


「真琴くん」

「…?」

「今日、色々とありがとう」


傘持ってきてくれたり、停電した時に助けてくれたり、ご飯作ってくれたり

今日だけで、たくさん助けられてしまった

お節介だって言っておきながら、こんなに世話のかかるようじゃダメだね


でも

「真琴くんがいてくれてよかった」

…本当に

「おやすみ」


なんとなく恥ずかしくなって顔を扉の方に向ける

早く退散しようと扉を引いた


その時

「…梓」


…へ?

慣れない優しい低音が私の名前を呼んだ…気がした

ゆっくり振り向く


「おやすみ、梓」

今度は確かに、そう言った


…え、なっ

なん、あず…え?

混乱して真琴くんを見る


「なんだよ、フルネームで呼ぶのやめろって言ったのお前だろ」


…え、あ、そういうこと?

てっきり名字で呼ばれるもんだと

だって私の同姓の血縁者フランスにいるし…


『梓』

っ…

かぁっと顔が赤くなる感覚を覚えて

逃げるように部屋を出た


「お、おやすみ!!」


バタン

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