無気力さんと同居するらしい


「梓、知り合い?」

ぅ…

蒼馬、その純粋な目をやめてくれ

純粋に謎だと思ってるその目をやめてくれないか


「…し、しりあぃ…じゃなィ…」

消えそうな声で言った

他人のフリ、他人のフリ…


「い、行こう蒼馬」

もう逃げるしかない

なんで声をかけてきたのか

なんでそんなに笑顔なのか知らないけど

私はあなたに言われた通り、他人のフリをし続けますからね!


「うお、梓?」

蒼馬の腕を掴んで逃げようとした

しかし…


「梓」


っ!?

呼ばれた自分の名前に足が止まる

え、え、え?

なぜ、え


いや

聞き間違い…聞き間違いじゃ


「梓」

聞き間違いじゃないわ

「…え?は?」

蒼馬が混乱してる


「梓、五限の化学、俺らんとこの教科担任が主張だからこっちと合同授業だって。クラスに伝えておいて」



………

「り、了解っす…」

「じゃ、あとで」


呆然とする私たちを見る真琴くんの顔は

王子とは程遠い、いつもの無気力顔で

そのまま何故かわざわざ私と蒼馬の間を通っていく真琴くん

蒼馬の腕を掴んでいた手を思わず離した


……

その後ろ姿を見送って沈黙が広がる

< 140 / 317 >

この作品をシェア

pagetop