無気力さんと同居するらしい
6 恋心らしい
「ただいま…」
わかりやすく、通らない声で呟く
…
だけど家の中からは何も聞こえない
まだ帰ってないのかな
リビングに向かいながら悶々と頭を回す
ちらつく蒼馬と真琴くん
いや、それよりまず洗濯とご飯を…
ガチャ
!
リビングの扉に手をかけた瞬間
自動で扉が開いた
見上げると扉の向こうでドアを開けたのは、まあ当然真琴くん
…なんだけど、何を考えているのか全くわからない例の無表情で私を見下ろす
「あ、いたの?ただいま」
「…」
え、聞こえてる?
ピクリとも動かない同居人
あれ、これ真琴くんだよね
フィギュアとかじゃないよね
えっと…あの
そこどいてもらえませんかね
めっちゃ立ちはだかってるから通れないんですけど
「あのー…真琴くん?」
え、せめて動こう?
喋れとは言わないから動いてくれ
声帯は使わなくて良いから筋肉使って
「真琴く」
「梓」
あ、喋った
「ど、どうしたの」
「…カフェ行ったの?あいつと」
あいつ
とは、蒼馬かしら?
「行ったけど…」
「…あそ」
えー聞いといて『あそ』はなくない?