無気力さんと同居するらしい


呆然としている梓

目をパチパチとさせて固まっている

…あー…言いすぎた?

いや、俺は間違ったことは言ってないと思うけど…


「…梓?」

俺が声をかけるとハッとしたように肩を揺らす

そしてわかりやすく狼狽え始める

「…あ、私…誰かに叱られたのって初めてかもしれない」

え?

思わぬ返答に気が抜ける

叱られたの、初めてって…

俺にはあんなに得意に説教するくせに?
あんなに甘えろだの頼れだの言ってくるくせに?



…叱られないってのは
一見、良さそうに思えるけど…梓の場合は違う

この人は知らないんだ

自分を大切にする方法を

友情とはまた少し違う、誰かに大切にされるということを、その受け止め方を知らないんだ

だから実の母親にだってあんなに気を使って、電話の一つもまともにできないんだろう

梓はきっと
誰かを大切にする方法しか…知らなかったんだ


< 275 / 317 >

この作品をシェア

pagetop